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コラム 「W1に魅せられて・・・」
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バイクといえば現在では4気筒エンジンが速くてどちらかというと一般的かもしれない。だけど、みんなと同じことをしててもなんとなくおもしろくないって思ったことありませんか?
現在乗っているBTは2気筒Vツインエンジンである。サウンドが心地良い。ハーレー程ドコドコとしたエンジンフィールはないがその分スロットルを回せば独特な粘りのある加速を与えてくれる。別に現在乗っているBTに不満は無い。動かなくなるまでずっと乗っていきたい。けれど、もし次乗り換えるならどんなバイクにするかな?ライダーなら大概みんなそんなことを一度は考えた事があるのではないだろうか。
私ならば空冷2気筒は外せない。そしてバーチカルツインエンジンなんてどうかな。そう、トライアンフのボンネヒルかスクランブラーみたいに渋いバイクが良い。
日本車でバーチカルツインっていったら現行モデルではカワサキからW650が出ている。残念ながらW650は外観ほどの味のあるエンジンを持ち合わしてないのが残念なところ。逆にいえば癖の無い素直なエンジンだから誰でも乗れて親しみやすいってメリットはあるんだろうけど、なんとなくあのパンチの無いおとなしさが好かない。
9月の信州に行った際、ドライブインに停まっているトライアンフのボンネヒルを発見したのだ。でも何かが違う。フロントブレーキはドラム。スピードメータ ーはマイル表示で車検を通す為に手書きでキロ表示を施している。そして右シフト。「これって旧車やん。」心の中で叫び、独りその場で興奮してしまった。トライアンフの旧車を初めて拝したのだ。
これがその時のボンネヒル。
旧車を眺めていて私が惚れ惚れするのが空冷エンジンの冷却フィンの造形美のすばらしさだ。現在のバイクではまず造れないね。当時の技術では、フィンを深くしてエンジンの表面積を多く取り冷却効果を上げていた。やがて研究が進み、現在では昔のように空冷フィンを深くするとかえって走行中、フィンとフィンの間に乱気流が起こりエンジンがかえって冷えにくいのでフィンが浅くなったのだそうな。だから現在の市販されている空冷バイクはフィンが浅く造られているんだね。でもそんな理屈は今の私にはどうでもよく、深く摂られたフィンの造形美に魅せられてしまった。
まさか旧車を持ちたいだなんてこれっぽっちも思ってやしない。この時はね。なんせ、感動はプライスレス、維持費はカウントレス。維持するのにどれだけのお金がかかるのかわかったもんじゃない。しかもトライアンフは非国産メーカー。もし何かトラブったらパーツはどうやって手に入れる?どこで修理してもらう?メンテナンスは?こういうものは憧れだけにして誰かが乗っているのを見つけては「かっこいいなぁ」って呟く程度が一番良いのさ。なんて自分に言い聞かせていた。
11月に入り、チャリがパンクしたので修理の為に会社近くのバイク屋…といっても原付しか販売してないような小さなお店にチャリを持って行ったのだ。「あれ?なんか見覚えのあるバイク・・・。」店の奥にあるそのバイクはタンクとシートが修理中の為、外されていたのに何であるかおおよその検討がついた。「店長これってもしかしてメグロですか?それともカワサキのWですか?」と私が尋ねると「若いのによく知ってるなぁ。カワサキのWや。」とその店長が教えてくれた。まさかこんなところでW1に出会えるとは。
タンクとシートが無い状態のW1。
W1とは簡単に説明するとかつてあったバイクメーカーのメグロがカワサキと合併した後、カワサキ名義で出したメグロDNAを色濃く残した名車である。つまりメグロのKシリーズの生まれ変わりがカワサキのWなのだ。
それから数日間、ことあるごとにそのバイク屋に顔を出すようになってしまった
。シートの張替えが終わりシートが装着されると来店。タンクが仕上がると来店。自分のバイクじゃないのについつい気になってしまう。そして、「エンジンかけてもええよ」の店長の一言に甘えて、W1にまたがる。「ドゥルルルン〜!!!」キック一発ですんなりエンジンに火が入る。OHVエンジン特有の排気サウンド
。サイレンサーを装着してるのでそんなにうるさくないのにどっしりとした音圧
。この音を出すには現在の法令、規制の中では市販車としては出したくても出せないであろう。特筆すべき点はエンジンもそうであるがメッキパーツも良い。基本錆なし。年月による若干の腐食はあるが、手入れをしていれば問題無く維持出来るレベルである。
「このW1を手に入れたい。」通っている間に本気でそう思うようになってしまった。ボンネヒルの旧車の衝撃的な出会いの時に抱いた、「旧車は持たないよ」という感情はどこへやら。しかし買いたいという衝動が込み上げてはくるがふところ事情は厳しかった。どうにかすればギリギリ買えないわけではなかったがこいつは何度も言うが旧車。30年以上昔のバイクだ。状態は良いとはいえ買って早々、トラブる可能性も充分に有り得る。散々迷いに迷った。さすがに現在所有しているBTを手放してまで買おうという無謀な事までは考えなかったがBTを所有しながら尚且つW1を持ちたい。
W1完成。
結局買うと踏み切る事はなかった。ある日、友人は「買わないで良かったやん。お金かかってしゃあないって!」といった。また別の友人は買わないことに「残念やな・・・もったいないなぁ・・・。」といった。どちらの意見も正解であろう。なぜならば私自身に強い意思があれば維持できるであろうし、逆に意思が弱ければどっちみち維持出来なかったであろう。
数日後、W1を買いたいというお客さんが現れたと店長から聞いた。W1はその人の手により大事に維持されていくのであろう。名残惜しい気持ちが込み上げてくる。しかし現実的に今の私には維持できない代物だ。
ウィンカーはオリジナルではないみたい。
いつかきっと…。W1を眺めながら誓うかのように心の中で呟いた。何年かかるかわからない。もしかしたらこんな状態の良いW1にもう出会えないかもしれない。しかし再びW1が現れることがあれば手に入れよう。そう誓うのであった。
*ここでいう「W1」とは、1971年11月発売の「650W1−SA」のことであり、初期モデルの右シフト、キャブレターがひとつだけの初期のW1とは異なります。
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| 2007年12月 更新 |
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